2016年12月4日日曜日

万国の法律家よ、団結せよ

世界有数の巨大ローファームの元パートナー弁護士ウィリアム・リー氏が、ガソリンスタンドで給油していたところ、「国へ帰れ」と罵声を浴びせられ、その後もしばらく車でつけ回されたという記事。
In Wake of Election, Wilmer's Bill Lee Reveals Troubling Incident

日系人を含むアジア人に対するヘイトが出てくるであろうことは大統領選挙前から予想されていたし、実際に選挙直後から全米各地で勃発していた。しかし、この記事には正直驚いた。
というのも、このリー氏がかつて経営していた法律事務所は世界中に支店を持ち、1000人以上の弁護士を要する超巨大ローファーム。要するに彼は、僕のような庶民弁護士が今まで会ったこともなければ今後も接触することもないであろう、いわば特権階級の人だ。どれほどの金持ちなのか想像もつかないし、日常生活で使う店や施設も市井の人々とは違っているだろう。今回はたまたま郊外のガソリンスタンドに立ち寄った際の出来事とはいえ、そんな彼でも危険な目に遭うということは、もはやアメリカにマイノリティーにとって安全な場所などないということを示している。

リー氏は言う。

“As a profession, we must ensure that the rule of law that is our fundamental core value is our highest priority and applicable and available to everyone.”
プロフェッションとして、われわれ法律家は、われわれの基本的根源的価値である法の支配こそが最も尊重されるべきであり、かつそれが万人に適用されることを確保しなければならない。

実際、今回の大統領選挙の結果を受けて、アメリカの法律家の間でトランプ政権と対峙するための新たなネットワーク作りが進行しているという話も、友人のアメリカ人弁護士から聞いている。


15年ほど前、上海で最も成功していると言われる法律事務所を訪問する機会があった。その経営者たちはみな30代。当時の日中物価格差も勘案すると、彼らの年収は日本での2億円に相当すると聞いた。そのうちの1人に、今後の目標について尋ねた。

「この国(中国)に法の支配を実現したいんだ」

それが彼の回答だった。


昨年、路上で或いはメディア上で立憲主義という言葉をたびたび聞くようになった。平易な言葉で憲法を語ろうとするあまり、それまで立憲主義という言葉を避けていた自らを恥じた。その反省を生かして、いま法律家として自分がやらなければならないことは「法の支配」という概念をこの国に根付かせ、広めることではなかろうか。

今から70年前、この日本という国は「悪法も法なり」に象徴される形式的法治主義を乗り越え、個人の尊厳を保障し尊重しうる法のみがその存在を肯定される「法の支配」を中核的価値とする現行憲法を採用した。自分が日本国憲法を学ぶ中で日本国憲法から教えられた「法の支配」の実感は、国や地域や文化を越えて、世界中の法律家たちと心を通わせ、力を合わせることを可能にする共通言語だと確信している。



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