2016年10月20日木曜日

交通事故に遭ったときに一番大事なこと その2〜健康保険を使う

 交通事故被害者の治療費を支払う責任を負っているのは誰か?と尋ねたら、多くの人は「もちろん加害者だ」と答えるでしょう。倫理的、道徳的には正解です。しかし、法律的にはそれは間違いです。
「なんでやねん先生!そんなはずないやろ!?」相談者の方からは毎度毎度そう言われます。正確に言い直しましょう。病院に対して治療費を支払う法律的義務を負っているのは、あくまでその病院で治療を受けている被害者本人です。

怪我をした被害者が治療を申込み、病院がそれを受け入れることによって(病院には受け入れる義務があります)、契約が成立します。契約者は被害者本人とその病院です。多くの場合、加害者の任意保険会社が直接、被害者の指定した医療機関に治療費を支払ってくれます。しかしこれはあくまで保険会社 のサービスの一環であって、保険会社が契約当事者になるわけではありません。そのため、何らかの理由でその保険会社が治療費の支払いをストップした場合、 病院が治療費を請求できる相手は、契約した患者である被害者本人しかありません。

何故ここでこんな「契約」うんぬんと小難しい話をするかというと、「保険会社から一方的に治療費の支払いを打ち切られた」と言って、困って法律事務所に来られる方が多いからです。正直申し上げると、その段階ではもはや打つ手がない場合がほとんどです。
相手方保険会社が払ってくれるからと、それまで自由診療で来ている場合は特に大変です。病院から10割自己負担の、とんでもない金額の請求をされることもあります。その段階で健康保険の使用と病院に伝えれば済む話ではありますが、僕は基本的に事故直後から健康保険もしくは労災保険を使うことをお薦めしています。あくまで治療費を医療機関に対して支払う義務を負っているのは交通事故の被害者なのですから、最初から請求される金額を最小にしておくことによって、後々の経済的リスクを最小化できるからです。

十数年前、弁護士になった当時、先輩から「昔は交通事故には健康保険が使えないと嘘をつく病院もあったんやで」と教えてもらいました。相談者・依頼者の中には自分の健康保険を使うことに抵抗を示す方もおられたので、その都度、健康保険を使った方が得である理由を伝えて、保険診療に切り替えてもらってきました。大阪市内で弁護士をやっていた約8年間、それで医療機関から保険診療への切り替えについて抵抗されたことは、ただの1度もありません。
ところが2012年に今の事務所で執務するようになって以降、あまりにも頻繁に医療機関からの抵抗に遭うので戸惑っています。嘘をついているというよりも、交通事故には健康保険は使えないものと頑迷に思い込んでいる医療機関があるように思います。
 
何度も言いますが、交通事故でも当然に健康保険は使えますし、むしろ使うべきです(ただし、仕事中や通勤途中の事故では労災保険を使った方が良い場合もあります)。「第三者行為届」という書類の提出が必要になりますが、用紙を手に入れて書ける範囲だけ記入し、健康保険団体に提出すればいいだけの話です。
 
僕の経験上、健康保険の使用に抵抗を示す医療機関は概して、治療水準も高くないように感じます。交通事故でも健康保険を使えること、使った方 が患者にとってメリットが大きいことはちょっと調べれば分かることなのにそれをあえてしないということは、その病院は患者のことを親身になって考えない医療機関であるということだと思います。そういう医療機関の医師が、患者のために親身になって治療方針を検討したり、何か新しい治療方法はないものかと論文 を調べたりといったことをするはずもないでしょう。以上が、あくまで私見ですが、健康保険の資料を申し出ることによって医療機関の良し悪しが判断できると僕が考える理由です。



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