2016年7月16日土曜日

トルコのクーデター

夜間学校英語クラスのクラスメイトだったトルコ人女性は、2歳の男の子のお母さんで元小学校教師。夫が地震学者でバークレーに来る前は東北大学に留学していたので、311は仙台で被災している。彼女は日本語が堪能だったけど互いに英語が苦手だったから、僕らはいつも頑張って英語で会話するようにしていた。

彼女が小学校で教師をしていたとき、トルコ政府は学校内でヒジャブの着用を禁じる法律を制定した。やむをえず髪の毛をさらして初めて教壇に立った日、彼女は職員室に帰ってから泣いたという。
物心ついたときから人前に出るときはヒジャブを被っていた彼女にとっては、下着姿或いは裸で人前に出るようなものだったのだろうか。それでも子どもたちの前ではけっして泣かなかったところが、彼女の教師としての矜持だったのだろう。
いつも彼女と一緒にいた親友は、ヒジャブを一切被らないテキスタイル・エンジニア。そういう多文化他宗教の寛容性を持った国がトルコだと思っていたし、当時ちょうどクルドとの停戦協定が成った直後でこれから良い方向に進むと思っていただけに、怪しい方向に進むトルコの現実に驚いた。

イスラム国(IS)の台頭後、シリアとの関わり方を巡ってロシアとも事実上の戦争状態となったトルコ。あこがれの国は気軽に観光目的で訪問できる場所ではなくなったように見える。そこでとどめを刺すかのような今回のクーデター。強権的すぎるエルドラン大統領の政策には何一つ賛同できるところはなく常々はやく退陣すればいいのにと思っていたけど、軍部のクーデターでひっくり返るのは最悪。今回ばかりは何とか乗り切ってほしい。戦車の前に身を挺して立ちふさがる、トルコの人々を支持します。

BBC
http://www.bbc.com/news/live/world-europe-36811357

アルジャジーラ
http://www.aljazeera.com/news/2016/07/turkey-prime-minister-coup-attempt-foiled-160716001125028.html

2016年7月15日金曜日

「翻訳できない世界のことば」


我々の話している日本語とは発想も表現も全く異なる、とてつもなく美しい言語がこの国にあることを教科書で知り、アイヌ文化に憧れた。中学のときだったか高校のときだったか定かでないけど、特定の月明かりだけを形容する同じように美しいスウェーデン語に触れて、その時のことを思い出した。


そうか、ぼけーっと何にも考えてない状態を形容する言葉は他国の人にとってユニークなのか。明治維新以降だけ見ると常に忙しく立ち回ってるのが日本人の性のように思えるけど、もしかしたら数千年に及ぶ日本語が形成されてきた時間の中では、むしろ今のような時代の方が例外なのかもしれない。


以前のブログにも書いたけど、言語と言語は基本的に互換性がない。翻訳する過程でどうしても原語のニュアンスがこぼれ落ちてしまう。だからこそ、いつも未知の文化に誘ってくれる他言語学習は何とも魅力的で楽しい。その楽しさが素敵なイラストとともにパンパンに詰まったこの本の中でも、僕が一番惹かれたのはこのフィンランド語poronkusema。


トナカイが休憩なしで疲れず移動できる距離を一言で言い表す、そんな言葉を持ちながら暮らしている人たちがこの地球上にいることを想像するだけで胸がときめいてしまうのです。









2016年7月9日土曜日

自衛隊員の命を守る野党(維新除く)への1票

今回選挙の最大争点が、自民公明維新の改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2議席を獲得するかどうかであることは間違いないでしょう。
しかし僕は、昨年成立した安保法制がこのまま運用されるに至るのか、それともここで歯止めがかかるのかという点もその次に大事な争点だと考えています。
その点に関して言えば、その時々の政権与党の政治的判断のためには自衛隊員が命を犠牲にするのはやむなしと考える人は自民公明維新に、自衛隊員が命をかけるのは国民を守るためだけであるべしという人は民進共産社民生活の4野党を選ぶべきです。

安保法制に関しては賛成だろうが反対だろうがいろいろ意見を言う前に、まずは実物を見てほしいと、いつも声を大にして言っています。実物と言っても、内閣官房がHPに上げてくれているこの新旧対照表を見るだけでいいのです。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/sinkyuu-heiwaanzenhouseiseibihou.pdf
今回の安保法制で改正した部分に線が引いてあります。最初は全部に目を通すのはしんどいでしょうから、下部の旧法欄に(新設)と書いてある条項をチェックしていくだけでも十分です。
(新設)と書いてあるところは文字通り、今回の安保法制で新しく付け加えられた条項、平たく言えば自衛隊の新たな任務です。そしてこれをずーとチェックしていけば、日本を守るための新設条項はただの一つもないことに誰でも気がつくはずです。この安保法制で新たに自衛隊に課された任務は一つ残らず全て日本とその周辺地域を離れた場所での任務です。

そして、唯一の新法である国際平和協力支援法はこちら。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anbun-kokusaiheiwasienhou.pdf
こっちはただの法文なので読みにくいでしょうが、とりあえず3条と別表だけ見れば全容が分かります。要するに「国際共同対処事態に際し」「外国の軍隊その他これに類する組織」への支援行動を自衛隊に課す法律です。

テレビのインタビューでこの安保法制によって日本の安全保障は向上するという立場の田母神俊雄さんも、安倍首相の説明はおかしいと言っていました。安倍さんが「自衛隊員のリスクも増えないし、日本の安全性も向上する」と言っていたのに対し、田母神さんは「自衛隊員のリスクは上がるが、その代わり日本の安全は向上するというべきだ」とおっしゃっていました。
この新制度で日本の安全が向上するかどうかは議論の余地があるところですが、自衛隊員のリスクが高まることは間違いありません。海外の紛争地での任務を大幅拡大するものなのだから、このことは法文上明らかです。だから、仮に安保法制に賛成するなら、自衛隊員の方たちに「どうか私たちの安全のために海外の紛争地で命を犠牲にして下さい。その代わり、あなたが亡くなったときの遺族補償や怪我して帰ってきたときの補償はきちんと責任を持ちますから」と頭を下げるべきなのです。

そしてこの「安全保障外交のために兵士の命を犠牲にする」政策をとってきたのが日本以外の西側先進諸国であり、その代表がアメリカとともにアフガン・イラクに攻め込んだイギリスと言って良いでしょう。そのイギリスの独立調査員会は先日、イラク戦争は不必要不適切な戦争だったとの調査結果を発表しました。そして、その発表を受けて亡くなった兵士たちの遺族は、自分の愛する人が犬死にさせられたことを知って悲嘆に暮れています。
http://edition.cnn.com/2016/07/06/europe/uk-iraq-inquiry-chilcot-report/index.html

イギリスが経験した取り返しのつかない過ちを日本にもたどらせるための法律が、この新安保法制です。この法律を通した自民公明はもちろん、おおさか維新も集団的自衛権行使にのみ手続要件加重を求めているだけで、紛争地での任務を拡大すること自体には全く反対していません。
https://o-ishin.jp/election/sangiin2016/pdf/manifest_detail.pdf
したがって自衛隊員やその家族の方、自衛隊員を無駄死にさせたくないという人は今回すべからく、4野党に投票すべきです。自衛隊員ひとりひとりの命を守るのは、わたしたちの1票です。