2016年2月4日木曜日

有名人のスキャンダル報道

弁護士にとって不倫と覚せい剤は日常の出来事、ある先輩弁護士が書いているのを見て確かにそうだなと思った(弁護士がみんな不倫や覚せい剤使用をしているという意味ではない、念のため)。自分自身のことを考えてみても弁護士登録依頼13年間、不倫と覚せい剤が途切れたことはほとんどない(自分がやってるという意味ではない、念のため)。だから、テレビをはじめとするマスメディアがそんなことで大騒ぎして有名人をあげつらうことは本当に理解しがたい。

日本の現行法上は覚せい剤の自己使用は犯罪ということになっているが、司法業界では「被害者なき犯罪」とも言われている。しかし、覚せい剤自己使用者はまさに被害者にほかならない。仕事柄いままで、覚せい剤によって精神も脳神経も人生もボロボロに壊された人たちとその家族をたくさん見てきた。加害者はもちろん、覚せい剤独特の異常に高い依存性を熟知して不法かつ莫大な利益を得ている、覚せい剤の販売者たちだ。ところが有名人の覚せい剤使用が発覚したときに、こういった覚せい剤事犯の本質に触れた報道を見た記憶は全くない。

ああいう報道を見ていると、この人たちは家族に自分の仕事をどうやって説明するのだろうと思う。はたして「お母ちゃんが他人のスキャンダルを頑張ってあげつらっているから、あんたはこうやってご飯を食べられてるんやで」とか、「お父さんお母さんが私を大学まで行かしてくれたおかげで、こうやって人の弱みを報道することで高給を得られるようになりました」とでも言うのだろうか?はたして彼ら彼女らは、自分の子どもや親に自分の仕事を説明することができるのだろうか?

これまた仕事柄、子どもを養うために性風俗産業に従事している人たちも何人か見てきた。子どもには自分の仕事は内緒にしている。しかし、彼女たちが傷つけているのは自分自身であって、けっして他人の弱みをあげつらって金を儲けているわけでも飯を食っているわけでもない。そこがメディア業界の連中とは根本的に異なる。

「職業には貴賎はない」という言葉があるが、賛同できない。職業には貴賎があると考えている。かつての依頼者である後者の人たちは僕にとっては「貴」であり、マスメディア業界の前者の人たちは「賤」である、そのように常々思っている。

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